センターについて

2021-2022年度岡山理科大学教育改革推進事業
 大学構内「地球史の名所」オリエンテーリングコースの開発と普及

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概要

自己と環境の存在背景を知るために、日本史・世界史と並んで、地球史を学ぶことは重要な意義がある。しかし地球史を学べる場は、特別の場所ととらえられがちである。本計画は学内という身近な場所にある、露頭、石材、「生きている化石植物」等を活用し、地球史を楽しみながら学ぶ場を構築して教育改革に貢献する。

背景と目的

現在、学生はネット情報に頼るあまり、好奇心をもって実物に接するという原体験が不足しているといわれる。日本史・世界史とともに自己の存在の背景を知るために重要な科学リテラシーである「地球史」においても、原体験は重要であり、大学教育では現場に行く実習(巡検)や催しが企画される。しかしそうした機会は専門の学生に限られており、参加できない学生は多い。本計画は、地球史を肌で感じる原体験が不足しがちな学生に、地球史を語る素材に接する機会を手軽に提供することを目的とする。大学構内という身近で何度でも訪れることができる場所と素材を使い、それら実物を見て観察し、感じ取って想像することの重要さを学ぶ。そして、改めて自分の存在と環境を考える契機とすることを目指す。テレビ等で報じられる派手なCG画像にあらわされるような地球史イベントも、地球上の何の変哲もない地層や岩石の観察によって編み出されていることの再認識を促すものである。

取り組みの課題解決への着眼点と解決方法

岡山理科大学構内には、地球史の教材として活用できる教育資源が多数ある。 例えば、A2号館の南側の崖は約3億年前に、当時大陸の一部だった日本の大陸斜面に堆積した砂岩泥岩層である。また同館の基石となっているのは恐竜時代末期の7千万年前に地下数kmに貫入固化し地上へ隆起した花崗岩である。学内のあちこちにみられる円礫層は2700万年前にこの付近に存在した河川の河原の堆積物である。 このほか、数千万年前の貝や有孔虫の化石を含む石灰岩が50周年記念館やC2号館で使われている。また学内には地質時代の生き残り植物で「生きている化石」と呼ばれるメタセコイア、セコイアメスギ、トクサ、イチョウなどが植栽されている。こうした素材は学生が地球史をつぶさに体験できる有効な教材となる。 「これらを観察して回る」行動の動機付けをするために、学内の、普段学生が往来するところを中心にして、オリエンテーリングコースを作る。ポイントには適切な看板を設置し、QRコードからアクセスできる専門教員による解説システムを構築する。また、これらポイントをつなぐためのパンフレットを作り、授業や、新入生の学内地理を学ぶためのグループワーク等で使用する。時間を競う競技オリエンテーリングと異なり、ポイントをめぐって理解を深めることが目的である。

事業の新規性・独創性

学内の素材を使い 「どこか遠くの特別の場所にあるもの」と考えられがちな地球史の観察場所が、毎日眺める風景の中にあることを認識してもらい、学生が「地球史を身近に感じる」ようにできることが新規性である。観察を促すために、作成した解説看板をつないでオリエンテーリングコースとすることが独創性である。また、オリエンテーリングコース化は学生の好奇心を高めることに役立つだけでなく、一緒にコースを回る学生同士の親睦をはかることも期待できる。

目標と実施計画

1年目の目標
オリエンテーリングコースの内容を検討し、モデルコースを作ったうえで、解説パネルの試作品を作って、学生の評価をもとに改善するところまで行う。
1年目の実施計画
①広島大学及び京都教育大学における先行事例の調査を行う。 ②オリエンテーリングのポイントとなる場所を選定し、その解説コンテンツの原稿を作成する。解説板のモックアップ(試作品)を設計作成する。
③解説板に説明用のQRコードを設置し、解説システムをネット上に立ち上げる。スマートフォンによって実際に解説を聞けることを確かめる。
④オリエンテーリングコースを研究室所属の学生に、実際に利用してもらい、問題となる点や改善提案を挙げてもらう。また総合的にシステムの使いやすさなどを評価する。
⑤評価結果と改善提案を受けて原案を修正し、コンテンツの最終版を作る。

2年目の目標
コンテンツを確定して最終版とし、看板を工作センター職員とともに、制作設置する。授業や新入生オリエンテーションで活用をはかる。利用方法の改善を図り、毎年安定した利用が継続するような「仕組み」を作って定着を図る。
2年目の実施計画
試作モデルが取り付けられている段階であるが、生物地球学科の新入生オリエンテーションで活用してもらい、チューターより改善提案を受ける。 それをもとに、さらにコンテンツを修正した上で、全ポイントの解説看板の正式版を工作センター職員とともに、制作設置してコースを完成させる。コースガイドのパンフレットを制作し、以下の要領で活用する。
①授業の一コマまたは、その予習や復習課題として、ポイントをめぐる課題を設定し、学生に学習を促す。授業で利用を予定する。
②生物地球学科をはじめとする学科の新入生歓迎レクリエーションなどの場で、グループワークのゲームなどとして利用を促す。
③コースを「学生向け(地球史探訪)」と「恐竜学博物館見学者向け(学生・一般向け 矢や初心者向けの簡単なコースとし、サテライト展示をつなぐことも兼ねる)」の二つに編みなおす。博物館を見学する学生、市民が、迷わずに展示をめぐり、さらに展示内容のより深い理解を得られるように参加を促す。
④野外看板は比較的簡易に更新可能なものとし、研究の進展に応じて随時更新する。

成果の公表と期待される効果

教育実践研究誌に製作過程と成果を発表する。 コンテンツを利用した講義の学習内容が深まると共に、学生がこの体験を通じて身近な自然物(街のビルの石材、街路樹、自然風景の中の露頭など)に目が行くようになり、身近な素材や風景を通して、地球史に好奇心を覚えるようになることが期待される。これらの点について、授業アンケート等で確認評価する。

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